結論から申し上げますと、「一部の財産だけを先に分けて、残りは後で決める」ということは法律上認められています。
これは専門用語で「一部分割」と呼ばれます。
一度にすべての遺産を分けるのが大変な場合、急いで手続きしたいものから先行して進めることができる便利な仕組みです。
1.なぜ「一部分割」をするの?
よくあるのは、以下のようなケースです。
- 葬儀代や納税資金を確保したい: 銀行預金だけを先に分けて解約し支払いに充てるため。
- 不動産の名義変更を急ぎたい: 売りたい土地がある、あるいは新しい法律で「3年以内」の期限ができたため、土地だけ先に決める。
- 話し合いが長引きそう: 一部の財産について揉めていても決まっているものだけ先に手続きを進めたい。
2.手続きの注意点
時期をずらして分ける場合でも以下のルールは変わりません。
- 相続人全員の合意が必要: 一部の財産だけであっても、相続人全員で「今回はこれだけを分ける」という合意が必要です。
- 書類を作成する: 「今回は銀行預金だけを分け、残りの家や土地は後日話し合う」という内容の書類(遺産分割協議書)を作ります。
3.知っておきたい「税金」と「トラブル」のリスク
ここが一番大事なポイントです。
- 相続税の特例が受けられない可能性: 相続税の申告期限(10ヶ月)までに全体の話し合いがまとまっていないと、配偶者の税金が安くなる特例などが、その時点では受けられないことがあります(後で修正は可能ですが、一度高い税金を払う必要があります)。
- 「争族」の火種になることも: 先に「分けやすい現金」だけを取ってしまい、後で「分けにくい古い空き家」が残ると、誰も引き取りたがらずに話し合いがストップしてしまうというケースがよくあります。
アドバイス
「まずは葬儀代のためにこの銀行口座だけ解約しよう」といった具体的な目的がある場合には非常に有効な方法です。
ただし、後で「そんなつもりではなかった」とならないよう、残された財産を誰が管理・負担するのかもセットで話し合っておくことが、円満な相続のコツです。